茅の輪くぐりとは?夏越の祓の意味と正しい回り方・NG行為を徹底解説
初夏の神社を訪れると、鳥居の奥や参道の中央に突如現れる、青々とした茅(カヤ)で編まれた巨大な輪。この光景を目にして「これは一体どうやってくぐるのか」「どのようなご利益があるのか」と足を止めた経験を持つ方は少なくないはずです。この神事は「茅の輪(ちのわ)くぐり」と呼ばれ、日本古来の重要な節目である夏越の祓(なごしのはらえ)に執り行われる伝統儀礼です。
2026年現在も全国津々浦々の神社で受け継がれるこの神事は、単なる季節の風物詩にとどまらず、日々の生活で知らず知らずのうちに身に付いた罪や穢れ(気枯れ)を祓い清め、向こう半年の無病息災・厄除けを祈願する決定的な意味を持っています。本稿では、神話に隠された起源から、現場で迷わない「8の字」の正しい回り方、唱え言葉、さらには絶対にやってはいけないNGマナーまで、余すところなく検証・解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:茅の輪くぐりは毎年6月30日を中心に行われる「夏越の祓」の主神事であり、半年の穢れを落として無病息災を祈る儀礼。
- 要点2:由来は日本神話の「蘇民将来伝説」にあり、左回り→右回り→左回りと「8の字」に3回くぐるのが基本作法。
- 要点3:茅の輪の草を引き抜いて持ち帰る行為は「他人の厄を背負い込む」厳禁事項であり、正しい知識と作法が不可欠。
【2026年最新】茅の輪くぐりとは?夏越の祓の意味と歴史的由来
茅の輪くぐりとは、菅(すげ)や茅(カヤ)などのイネ科植物を束ねて作った大きな輪をくぐり抜けることで、心身の穢れを祓い清める神道儀礼です。毎年6月30日に全国の神社で斎行される「夏越の祓(なごしのはらえ)」を象徴する神事として知られています。
古代の日本において、1年は1月から6月までの「前半」と、7月から12月までの「後半」という明確な2つのサイクルに区分されていました。それぞれの最終日(6月30日と12月31日)には、国中の穢れを祓い清める「大祓(おおはらえ)」が行われます。12月の大祓を「年越の祓(としこしのはらえ)」と呼ぶのに対し、6月の大祓が「夏越の祓」です。
神社本庁および神道資料によると、平安時代の宮中儀礼をまとめた『延喜式(えんぎしき)』巻八の「大祓祝詞(おおはらえのことば)」にもその原型が克明に記されています。湿気と気温が急上昇する旧暦6月は、現代以上に疫病や食中毒が蔓延し、農作物が害虫被害に遭いやすい過酷な時期でした。医療が未発達だった時代、人々は目に見えない災厄や病魔を神話的な「穢れ」と捉え、神々の前でリセットすることで生き延びようとしたのです。

【神話の真相】なぜ茅(カヤ)なのか?蘇民将来伝説に見る厄除けのご利益
なぜ藁(わら)や竹ではなく「茅(ちがや/かや)」で輪を作るのか。その根拠は、奈良時代初期に編纂された『備後国風土記(びんごのくにふどき)』逸文に記された「蘇民将来(そみんしょうらい)伝説」にあります。
旅の途中で宿を求めた武塔神(むとうしん/素戔嗚尊・スサノオノミコトの化身とされる)に対し、裕福な弟の巨旦将来(こたんしょうらい)は冷酷にも宿泊を拒否しました。一方で、貧しい兄の蘇民将来は粟の飯を炊いて手厚くもてなしました。のちに武塔神は恩に報いるため、「もし後の世に疫病が流行したならば、茅の輪を腰に着けよ。『私は蘇民将来の子孫である』と名乗れば、疫病の災いから免れるであろう」と授けたと伝えられています。
古来、茅(チガヤ)は鋭利な葉を持ち、強靭な生命力と独特の抗菌・薬効作用を有することから、邪気を切り裂き悪霊を遠ざける呪術的植物として神聖視されてきました。腰に巻く小さな輪から始まった風習が、中世から近世にかけて神社参道の巨大な輪へと発展し、現在私たちが目にする「茅の輪くぐり」として定着した経緯があります。
【図解と手順】茅の輪の正しい回り方と唱え言葉|左・右・左の8の字作法
いざ神社の茅の輪の前に立つと、どのような足運びでくぐればよいのか戸惑う参拝者は少なくありません。基本となるのは「左まわり → 右まわり → 左まわり」の順で無限(8の字)を描くように計3回くぐる作法です。
現場での具体的な手順は以下のステップで進行します。
- 1周目(左回り):茅の輪の正面に立ち、軽く一礼。左足から輪をまたいでくぐり、左側へ大きく回って正面に戻る。
- 2周目(右回り):正面で一礼し、今度は右足から輪をまたいでくぐり、右側へ大きく回って正面に戻る。
- 3周目(左回り):正面で一礼し、再び左足から輪をまたいでくぐり、左側へ回って正面に戻る。
- 本殿へ参拝:正面で最後の一礼をし、左足から輪をくぐり抜けてそのままご神前(本殿)へ進み、通常の「二礼二拍手一礼」で参拝する。
茅の輪をくぐる際、心の中で唱えるべきとされる代表的な「唱え言葉(和歌)」が存在します。神社によって掲示されている文言が異なる場合がありますが、代表的な3首を把握しておくと安心です。
最も広く知られているのは、拾遺和歌集に収められている「水無月の 夏越の祓する人は 千歳の命 のぶといふなり」(6月の夏越の祓を受ける人は、寿命が千年延びるほど息災であるという意味)です。また、神道の根本を唱える「祓へ給ひ 清め給へ 守り給ひ 幸へ給へ(はらえたまい きよめたまえ まもりたまい さきわえたまえ)」、あるいは蘇民将来伝説にちなんだ「蘇民将来の子孫なり」と念じる作法も正統な形式として認められています。

【実態検証】知らずにやると逆効果?やってはいけないNG行為と人形の作法
無病息災を願う神事でありながら、誤った知識やネット上の不確かな噂を鵜呑みにして参拝すると、かえって無作法になるリスクがあります。神社関係者や神職への取材データでも頻繁に問題視されるのが「茅の輪の草を引き抜いて持ち帰る行為」です。
「厄除けのお守りになる」と勘違いし、設置された茅の輪から草をちぎって持ち帰る参拝者が後を絶ちません。しかし、茅の輪は「多くの参拝者がくぐり抜けることで、その人たちの半年分の穢れを吸着している依り代」です。他人の穢れが蓄積された草を持ち帰ることは、厄を自宅に招き入れることに等しく、神社側からも固く禁じられています。授与品としての「ミニ茅の輪守」が社務所で頒布されているため、お守りが欲しい場合は正規の授与品を受けましょう。
また、夏越の祓では自身の分身となる「人形(ひとかた)」や「祓代(はらえつど)」を用いたお祓いも同時に行われます。
| 神事・儀礼項目 | 詳細・具体的な手順 | 一般的な基準・初穂料相場 | 編集部の見解・注意点 |
|---|---|---|---|
| 茅の輪くぐり | 境内に設置された茅の輪を「左・右・左」の順に8の字にくぐる | 無料(賽銭のみで誰でも参拝可能) | 混雑時は前の人と距離を保ち、無理な割り込みや逆走は避ける。草の持ち帰りは厳禁。 |
| 人形(ひとかた)祓い | 紙の人形に氏名・年齢(数え年)を書き、体を撫でて息を3回吹きかける | 1体あたり100円〜1,000円程度(志納・初穂料) | 郵送対応を実施する神社も多数。自身の不調な患部を撫でて厄を移すのが伝統的作法。 |
| 車形(くるまがた)祓い | 車のナンバーや所有者名を記入し、交通安全・無事故を祈願する | 1台あたり500円〜2,000円程度 | 車社会の地方都市や郊外の神社で広く普及。日常の運転リスクをリセットする意識付けに有効。 |
| 授与品(茅の輪守) | 社務所で頒布される小型の茅の輪を自宅の玄関や神棚に飾る | 1体 800円〜1,500円程度 | 玄関の外側または内側の目線より高い位置に祀ることで、半年間の家庭内の魔除けとなる。 |
【文化と地域差】京都の和菓子「水無月」の風習と東京・関西の名社比較
夏越の祓は、神社の神事だけでなく食文化とも深く結びついています。とりわけ関西・京都を中心として全国に広まったのが、6月30日に和菓子「水無月(みなづき)」を食べる風習です。
水無月は、白いういろうの上に甘く煮た小豆を散らし、三角形に切り分けた伝統菓子です。かつて平安時代の宮中では、冬の氷を氷室(ひむろ)に貯蔵し、初夏に取り出して暑気払いをする特権的な行事がありました。庶民には手が届かなかった貴重な氷の破片を模したのが「三角形の白いういろう」であり、上に乗る「赤い小豆」は古来より悪霊や疫病を祓う力があると信じられてきました。
また、茅の輪が設置される時期(いつからいつまで)には神社ごとに一定の幅があります。当日である6月30日のみ設置する神社もあれば、混雑緩和のために6月中旬〜7月上旬まで長期設置する神社も増えています。
【東京の主な名社と設置動向】
- 神田明神(東京都千代田区):例年6月下旬より巨大な茅の輪が設置され、多くのビジネスパーソンや参拝客が訪れる。
- 日枝神社(東京都千代田区):都心の真ん中で本格的な大祓式が斎行され、授与品の茅の輪守も高い人気を誇る。
- 東京大神宮(東京都千代田区):縁結びで名高いが、夏越の祓期間中は形代流しや限定神符の授与が行われる。
【関西の主な名社と設置動向】
- 北野天満宮(京都市上京区):直径5メートルにも及ぶ京都最大級の「大茅の輪」が楼門に掲げられ、圧巻の景観を誇る。
- 上賀茂神社・下鴨神社(京都市):境内を流れる清流(御手洗川など)で人形を流す厳かな神事が執り行われる。
- 住吉大社(大阪市住吉区):住吉祭(夏祭り)と連動し、色鮮やかな装束の夏越女や神児が茅の輪をくぐる伝統行事が継承されている。

【プロの結論】民俗心理学から読み解く「穢れのリセット」と参拝の心得
民俗学および社会心理学の観点から「茅の輪くぐり」を分析すると、この儀礼は単なる宗教的行事を超えた「心理的バウンダリー(境界線)の再構築」という極めて合理的な機能を果たしていることが分かります。
人間は日常生活において、対人関係のストレス、予期せぬ失敗、抑圧された感情など、目に見えない心理的負荷を蓄積させていきます。神道ではこれを「気枯れ(エネルギーが枯渇した状態)」と呼びました。半年という節目に「身体を動かして特定の境界(輪)をまたぐ」「息を吹きかけた紙を流す」という身体的アクションを伴う儀式を行うことで、脳と心に『ここから先は新しい自分である』という明確なリセットスイッチを入れることができるのです。
【プロの結論】茅の輪くぐりをおすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
- おすすめできる人:
- 年初から仕事や人間関係で停滞感やストレスを感じ、後半戦に向けて気分を切り替えたい人
- 体調不良や厄年など、健康面・メンタル面での不安を払拭したい人
- 日本の伝統的な四季の移ろいや食文化(水無月など)を五感で楽しみたい人
- 慎重になるべき人(参拝時の注意が必要な人):
- 6月30日当日の大混雑・炎天下での待機に不安がある高齢者や小さな子ども連れ(混雑を避け、設置期間が長い神社への平日参拝を推奨)
- 「くぐりさえすれば努力不要で運気が上がる」という他力本願のみを求める人(神事は自身の内面を省みるきっかけであって魔法ではないため)
【茅の輪 くぐり と は】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:茅の輪くぐりの設置期間はいつからいつまでですか?
A1:神社によって異なりますが、最も一般的なのは6月下旬(6月20日前後)から6月30日当日までです。近年は参拝客の分散を目的に、7月上旬(七夕前後)まで設置を継続する神社も増えています。参拝を予定している神社の公式告知を事前に確認することをおすすめします。
Q2:唱え言葉を声に出して言えない場合はどうすればよいですか?
A2:声に出さず、心の中で念じるだけで全く問題ありません。混雑している境内では周囲に配慮し、心の中で「祓へ給ひ 清め給へ」や「水無月の 夏越の祓する人は…」と唱えながら静かに回るのがスマートな参拝マナーです。
Q3:茅の輪の草を持ち帰ってお守りにしてはいけない理由は?
A3:茅の輪は参拝者全員の罪や穢れを吸い取るための「フィルター」の役割を果たしています。そこから草を引き抜くことは、他人の厄を自ら持ち帰ることになるため禁忌とされています。お守りが欲しい場合は、社務所で祓い清められた授与品の「茅の輪守」を受けましょう。
Q4:喪中や忌中の場合でも茅の輪くぐりに参加してよいですか?
A4:近親者が亡くなってから忌明け(一般的に50日祭が終わるまで)の期間は、神社の鳥居をくぐること自体を控えるのが神道の原則です。忌明けを過ぎて「喪中」の段階であれば参拝しても差し支えないとする神社が多いですが、不安な場合は神職に直接相談するか、翌年以降に改めて参拝するのが望ましいでしょう。
まとめ:半年の穢れを祓い清らかな心で後半戦を迎えるために
茅の輪くぐりは、日本人が古代から受け継いできた「生きるための知恵と祈り」が凝縮された美しい神事です。過酷な夏を乗り切るための無病息災祈願であり、日々の生活で蓄積した目に見えない心の澱(おり)を清める絶好の機会でもあります。
「左・右・左」の8の字を描く正しい回り方を守り、他人の厄を背負わないマナーを心得ることで、そのご利益を十全に受け止めることができます。1年のちょうど折り返し地点となるこの時期、お近くの神社へ足を運び、清々しい心身で充実した後半の半年を迎えてみてはいかがでしょうか。 (出典: 茅の輪 くぐり と は(Yahoo!ニュース))