「これを機に」の正しい意味と敬語マナー|目上の人への注意点と例文解説
ビジネスメールや挨拶状、退職時のスピーチなどで頻繁に目にする「これを機に」というフレーズ。何気なく使われがちな定番表現ですが、文脈や相手との関係性によっては「上から目線」や「恩着せがましい印象」を与えかねない落とし穴が潜んでいます。
ビジネスコミュニケーションにおける言葉選びは、単なるマナーにとどまらず、信頼関係の構築や個人の評価に直結します。本稿では、「これを機に」の本来の意味や敬語表現としての妥当性、「これを機会に」「これを契機に」との明確な使い分け、目上の人へ送る際の実践例文まで、現場目線で徹底解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「これを機に」は「この好機や出来事をきっかけとして」を意味し、前向きな行動や変化を示す定型表現である。
- 要点2:目上の人に対して使う際は、命令や誘導と受け取られないよう丁寧なクッション言葉や語尾の敬語調整が不可欠。
- 要点3:「機会(チャンス)」や「契機(ターニングポイント)」など類似表現とのニュアンスの差を理解し、場面に応じた適切な言い換えが信頼を生む。
【基本解説】「これを機に」の正しい意味とビジネス敬語における位置づけ
「これを機に(これをきに)」は、ある出来事やタイミングを「絶好のチャンス・きっかけ」と捉え、それを足がかりに新しい行動を起こしたり、関係性を深めたりする際に用いられる接続的な慣用表現です。「機」という漢字には「物事の起こる兆し」「活動の重要なきっかけ」という意味が込められています。
文法上、「これを機に」単体は敬語ではありません。そのため、ビジネスシーンで目上の人や取引先に対して使用する際は、文末を「〜していただけますと幸いです」「〜いたす所存でございます」などの丁寧語・謙譲語と組み合わせることで、全体として失礼のない敬語表現として成立させます。
例えば、「これを機に今後ともよろしくお願いいたします」という結びの挨拶は、異動、新規プロジェクトの開始、式典など、関係性を前進させたいあらゆる節目で重宝される定番フレーズとなっています。

「これを機に」「これを機会に」「これを契機に」の決定的な違いと使い分け
ビジネス現場で混同されやすいのが「これを機に」「これを機会に」「これを契機に」の3つの表現です。意味合いは非常に似通っていますが、含まれるニュアンスの重みやフォーマル度に明確なグラデーションが存在します。
| 表現 | ニュアンス・使われる文脈 | フォーマル度・適した場面 | 編集部の見解・使い分けのコツ |
|---|---|---|---|
| これを機に | 汎用性が高く、日常的な業務連絡から挨拶状まで幅広く対応 | 中〜高(メール・口頭双方で自然) | 最も使い勝手が良く、迷った際のファーストチョイス |
| これを機会に | 「好都合なタイミング」「巡り合わせ」を強調したいとき | 中(親しみやすさと丁寧さのバランス) | 展示会や名刺交換後の初コンタクトに最適 |
| これを契機に | 「重大な転換点」「歴史的な変化のトリガー」を意味する | 高(書面、プレスリリース、式典スピーチ) | 組織改編、業務提携、不祥事後の再発防止策など重みのある場面向け |
「契機」は哲学用語の「モーメント(Moment)」に由来し、物事の発展を促す本質的な要因を指すため、軽微な日常メールで多用するとやや大げさな印象を与えます。一方、「機」や「機会」は日々のビジネスコミュニケーションに心地よく馴染みます。
目上の人に使うと失礼?ビジネス現場で避けるべきNGパターンと誤解
ビジネスメールや対面でのやり取りにおいて、「これを機に」を目上の人(上司・取引先の重役など)に使う際、思わぬ誤解を招くパターンがあります。
代表的なNG事例が、相手に行動を促す文脈で使うケースです。例えば、「これを機に、ぜひ弊社の新システムをご導入ください」という使い方は、相手の意思決定を急かしたり、上から目線で商談の機会を都合よく利用しているような印象を与えかねません。
目上の人に対して「これを機に」を用いる際は、以下の2つの原則を守ることが鉄則です。
1. 主語を「自分側の行動・決意」に置く
「これを機に、より一層業務に励む所存です」のように、自身の姿勢や決意を表明する形であれば、相手に対して失礼にあたることは一切ありません。
2. 相手への依頼・継続を願う場合はクッション言葉を添える
「これを機に、何卒ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます」「もしよろしければ、これを機にご縁を賜れますと幸甚に存じます」といった配慮を示す表現に昇華させることが重要です。

【実務直結】ビジネスメール・退職挨拶ですぐ使える場面別実践例文集
現場の実務ですぐに活用できる、シチュエーション別の実践例文を紹介します。コピペで終わらせず、文脈に合わせて微調整することで洗練された文章に仕上がります。
1. 名刺交換後・初商談後の御礼メール
「先ほどは貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。これを機に、貴社の事業成長に貢献できるご提案を継続してまいりたく存じます。今後とも何卒よろしくお願い申し上げます。」
2. 担当者変更・着任の挨拶メール
「この度、〇〇の後任として貴社を担当させていただくことになりました△△でございます。これを機に、より迅速かつ丁寧なサポートを心がけてまいりますので、何卒よろしくご指導のほどお願い申し上げます。」
3. 退職時の社内外向けスピーチ・挨拶メール
「本日をもちまして、〇年間勤めました株式会社〇〇を退職いたします。未熟な私を温かく支えてくださった皆様には、心より感謝申し上げます。これを機に新たな道へと進むこととなりますが、皆様からいただいた教えを胸に精進してまいります。」
4. お詫び・トラブル対応後の改善表明
「この度の不手際につきまして、重ねて深くお詫び申し上げます。これを機に社内のチェック体制を抜本的に見直し、再発防止に万全を期して取り組んでまいります。」
【語彙力アップ】言い換え類語表現とグローバル対応の英語表現
同一の文章内で「これを機に」が何度も重複すると、語彙の乏しい印象を与えてしまいます。文脈に応じた適切な類語への言い換えや、海外とのビジネスで使える英語表現を押さえておきましょう。
【主な言い換え・類語表現】
・「〜を皮切りに」:一連のプロジェクトやイベントが連続してスタートする場面で活用。
・「〜を節目として」:創立記念、退職、事業譲渡など、時間の区切りを厳粛に意識させる場面に最適。
・「〜を足がかりに」:次のステップへの足場を固める前向きなビジネス戦略を語る際に適した表現。
・「〜とのご縁を機軸に」:人脈や取引先との出会いを特別に大切にしたい手紙などで効果的。
【グローバルビジネスで使える英語表現】
英語圏では「take this opportunity(この機会を利用する)」という言い回しが「これを機に」のニュアンスに最も近く、フォーマルな文脈でも標準的に使われます。
・I would like to take this opportunity to thank you.(これを機に、心より感謝申し上げます)
・Taking this opportunity, we will further strengthen our quality control.(これを機に、品質管理を一層強化してまいります)

【プロの結論】ビジネスコミュニケーションにおける心理的効果と判断基準
言語社会学および対人心理学の観点から見ると、「これを機に」という接続詞句は、「過去の文脈を清算し、新たな心理的契約(Psychological Contract)を結び直すリセットボタン」としての機能を持ちます。
人間関係や商談において、進展が滞っている状態から次の一歩を踏み出す際、人間は「理由」を求めます。「これを機に」という言葉を添えることで、相手に対して唐突感を与えることなく、「なぜ今その提案をするのか」「なぜ今関係を深めたいのか」という大義名分を自然に提示できるのです。
【使うべき場面と避けるべき場面の判断基準】
・積極的に使うべき状況:初対面後のフォロー、組織体制の刷新、感謝の伝達、前向きな自己改革の宣言など、関係性を発展させたいとき。
・使用に慎重になるべき状況:相手に非があるクレームの最中(火に油を注ぐリスクあり)、相手に重大な金銭的・労力的負担を一方的に求める商談のクロージングなど。
【これを機に】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:「これを機に」は口頭(会話)で使っても不自然ではありませんか?
A1:まったく問題ありません。朝礼のスピーチ、送別会の挨拶、取引先との雑談など、口頭でも非常に自然に使われる敬語フレーズです。
Q2:年賀状や暑中見舞いなどの季節の挨拶で使っても良いですか?
A2:適しています。「これを機に、ご無沙汰をお詫び申し上げますとともに…」や「これを機に、一層のお引き立てを賜りますよう…」といった形で、久しく連絡を取っていなかった相手へのきっかけ作りとして効果的です。
Q3:「これを機に」を漢字ではなく「これをきに」とひらがなで書くのはマナー違反ですか?
A3:マナー違反ではありませんが、ビジネス文章では漢字表記の「これを機に」が一般的です。全体の漢字含有率が高く文章が硬すぎると感じる場合のみ、ひらがな表記を選択すると良いでしょう。
まとめ:信頼されるビジネスパーソンのための「これを機に」活用術
「これを機に」は、ビジネスの出会いや変化を次なるステップへと繋ぐ強力なコミュニケーションツールです。目上の人に対する敬意の示し方や、前向きな決意表明としての主語の設定、類語との細やかな使い分けを意識するだけで、相手に届くメッセージの信頼感は格段に高まります。
言葉の持つニュアンスを正しく操り、日々のメールやスピーチで効果的に活用していきましょう。 (出典: これ を 機 に(Yahoo!ニュース))